九州電力による再生可能エネルギーの発電抑制問題、2014年10月以降からホットな話題になってきました。
再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電は固定買い取り制度(FIT)が追い風となって、個人から企業まで多くの設備が稼働してきています。
その勢いはすさまじく、電力会社の想定をはるかに超える量の太陽光発電設備が稼働し、その結果、電力会社が買い取る発電量が過剰になり、電力需要を超えてしまう可能性が出てきました。
電力需要より電力供給が上回ってしまうと電力の安定供給ができなくなる可能性があり、最悪のケースでは停電する懸念があります。
そのため、九州電力としては、新規に申込みされる再生可能エネルギーの発電設備について「待った」をかけているのです。
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そのような状況の中、WWF(世界自然保護基金)は独自の分析を行い、「九州電力は再生可能エネルギーの発電抑制する必要なし」との見解を示しました。これが事実なら九州電力の怠慢となるのですが、はたしてWWFの調査結果は正しいのでしょうか?
今回は、WWFの分析結果を見ながら、九州電力の発電抑制の是非について検討していきたいと思います。
WWFの分析結果
それでは、WWFが公開した分析結果を以下に示します。
これは、九州電力における電力の需要と供給の関係を示したグラフです。需要は軽負荷時、すなわち電力をあまり必要としていない時期のものになっています。対して供給は、太陽光や水力発電が目一杯発電したときの発電量となっています。
発電抑制について話をする場合、電力の供給が需要を上回ってしまうことが問題ですので、最も需要がない時期と、最も供給がある場合とを比較しています。
このデータを見ると、何もしないでいると供給が需要を上回るので、九州電力としては発電抑制が必要であると言えます。
しかし、WWFは、他電力管内への余剰電力の送電を行うことで、九州電力の発電抑制は不要だと分析しています。
他電力管内への送電
ここで言う他電力管内への送電とは、具体的には中国電力への送電を意味します。
九州電力の隣は中国電力ですので、送電することは不可能ではありません。WWFの見解では、中国電力への送電によって259〜556万kWの需要増が見込めると試算しています。
確かに、最大の556万kWまで送電できれば、電力需要が供給を上回るので発電抑制は不要のように思えます。しかし、最小の259万kWであった場合、やはり電力需要が供給を下回るため、発電抑制が必要となりそうです。
ただし、これはあくまでも管内の電力需要が最も少ない時期での比較ですので、その時期だけ過ぎれば電力需要が増えてくるため、ある一時期だけ発電抑制すればよく、新規の申し込みの回答を保留してまで再生可能エネルギーの発電買い取りを中断することはないとも言えます。
今後は全数買い取りできるのか?
WWFの分析結果によれば、九州電力はまだ新規買い取り中断するほどではないことが読み取れます。それでは、この結果を受けて九州電力は買い取りを再開するのでしょうか?
おそらく、答えはNOだと思われます。
現状、国が介入して九州電力の余力を計算しているところですが、その分析方法はそもそもWWFとは異なります。そして国の分析結果はWWFの分析結果よりも最悪ケースで検討するでしょうから、結局余力なしと見なされる可能性が高いと思われます。
たとえ買い取り可能と判断されても、現在行われている新規買い取りの条件「日中の発電規制」は継続されることになると思います。日中に発電しても売電できないので、その間発電した電気を溜める蓄電池が必要となり、初期投資が多大になります。
WWFの分析結果はあくまで参考程度にしか使われないと思いますので、過度な期待はできないと言えます。
※九州電力の新規買い取り中断は、50kW以上の大容量発電に限るため、一般住宅に備え付ける太陽光発電なら問題なく新規買い取り可能です。