2014年11月現在、九州電力は太陽光発電を含む再生可能エネルギー発電設備に対する接続申し込みの回答保留を継続しています。
その状況のなか、九州電力に接続申し込みをした発電設備のうち、送電設備の増強が必要と判断された総発電量が253万kWであったことがわかりました。
[毎日新聞]再生可能エネルギー:九州電253万キロワット分設備不足
以下、記事の抜粋です。
再生可能エネルギー事業者が9月末までに九州電力に接続の検討を申し込み、送変電設備の増強が必要だと判断されたケースが2650件、出力規模で計約253万キロワットに達していたことが、九電への取材で分かった。
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送変電設備の増強とは?
上記のニュースで出てきた「送変電設備」とは、具体的にはどのような設備なのでしょうか?
送変電設備とは、簡単に言うと「発電設備から発電した電気を送るための設備」です。たとえば火力発電所であれば、発電した電気を高圧電線を経由して変電所に運ばれ、そこから各家庭や企業・工場が使える電圧まで変換して送ります。
今のように太陽光発電が乱立する前は、このような送変電設備は、基本的に電力会社が所有する発電所で発電した電気を各家庭や企業に送るだけでした。そのため、発電所の近辺や、電力需要の多い都市部については、この送変電設備が多くありますが、一方で地方では電力需要が低く送変電設備の能力が乏しいのです。
以下は、日本全国の主要な送電網の図です。見ると分かりますが、主要都市部を中心に送電網が巡らされ、人口の少ない地方部では送電網が少ないことがわかります。
しかしながら、昨今の太陽光発電設備の乱立によって、この送電網が大きな問題となっています。
太陽光発電設備を作りには大きな土地が必要となりますが、送電網が多い都市部に広い空き地はありません。また、周囲に高い建物があると太陽光が遮断されてしまいますので、太陽光発電設備は自然と「日照時間が長い、地方部」が人気になってきます。たとえば九州は年間日照時間が長いため、太陽光発電設備が多く存在します。特に南の大分や宮崎などに集中しているようです。
効率的な発電のためには地方部に太陽光発電設備を作るのが良いのですが、その代わり地方では上図の通り、送電網が少なく容量不足なのです。そのような土地に太陽光発電設備が多く設置されてしまったため、九州電力としては送変電設備の能力不足のため回答保留を余儀なくされているという状況です。
送変電設備から見る電力会社回答保留問題
先ほどまでは九州電力の回答保留の例でしたが、送電網の密度から、他の電力会社の再生可能エネルギー買取保留の傾向も見えてきます。
先ほどの日本全国の送電網の図を再掲します。
先ほど説明したように、送変電設備の能力に乏しく送電網が少ない地域は再生可能エネルギーの接続申し込み回答保留される傾向にありますので、送電網が少ない地域を見ていきます。
すると、九州の南以外でも、四国、近畿南部、北陸、東北、北海道については送電網が少なくなっています。これは現在、再生可能エネルギーの接続申し込みについて回答保留している電力会社とほぼ一致します。
このことからも、再生可能エネルギーの接続申し込みの回答保留している地域と送電網の多さについては、相関があると言えます。
太陽光発電設備の発電効率を優先させると、送電網が少ない地域ばかりに集中してしまいますので、結果として回答保留せざると得ない状況になるということですね。