本ブログでもたびたび取り上げている九州電力の再生可能エネルギー新規申込みに対する回答保留問題ですが、進捗があったので内容を紹介します。
そもそもの回答保留問題については、以下の記事をご覧ください。
九電エリアで10kW以上の太陽光パネル住宅に朗報!50kW未満設備の新規買い取り再開
2014年10月現在、九州電力は50kWを超える再生可能エネルギーの申込みについて回答保留しています。50kWというと個人宅では搭載不可だと思いますので、基本的には事業者が保留対象になっています。
九州電力の回答保留について、今のところ保留解除の時期は未定ですので、設備投資したのにいつまで経っても買い取り開始できない状況です。
そんななか、10月29日に九州電力が「回答保留期間中における個別協議の具体的な要件」についての資料を公開しましたので、その詳細を今回は紹介していきます。
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個別協議とは?
九州電力が今回発表した個別協議ですが、これは何なのでしょうか?
ここでの個別協議とは、九州電力エリア内で回答保留されている事業主に対して、優先的に買い取り協議することです。
優先的に、ということは、現状は回答保留している設備について、他の設備よりも先に九州電力と交渉して買い取り開始できる可能性があるということです。これは回答保留されている事業主にとっては願ってもない提案です!
しかし、無条件に個別協議できるわけではありません。九州電力の太陽光発電を受け入れるキャパシティはいっぱいいっぱいですから、50kW以上の設備の回答を保留しているので、そう簡単に個別協議してくれません。
それでは、個別協議してもらうためには、どのような条件を飲まないといけないのでしょうか?
個別協議するための条件
九州電力と個別協議するための条件は、九州電力ホームページに公開されています。
それでは、1つずつ見ていきます。
9時~15時に発電停止、または蓄電池に充電
この条件が一番厳しいのではと思います。無条件で毎日9時から15時の間、発電した電気を九州電力に送ってはいけないということです。
もともと九州電力が太陽光含む再生可能エネルギーの回答を保留したのは、発電量が安定しない太陽光発電などが増えることによって、電力需要より発電量が多くなり、安定的に電力を各家庭に供給できないためでした。
このことから考えると、個別協議を行い、設備が発電した電気を買い取ってもらうためには、電力需要を超えないように発電するしかありません。
九州電力の個別協議の条件に「9時から15時に逆潮流しない」とあるのは、こうした理由からだと思われます。
こうなると、回答保留されている設備については、
1)蓄電池を別途追加して、9時から15時以外の時間に放電して買い取ってもらう
2)9時から15時は発電しないよう設備を停止する
の、どちらかの方法しかありません。
太陽光発電の場合、日中しか発電できませんので、上の2)の方法は実質採用できません。
とすると、残る1)の方法を採るしかありませんが、これには別途蓄電池を設置する費用がかかります。
なお、設置しなければならない蓄電池の容量は、設備の発電量全体の83%を6時間分貯めておける分が必要です。
たとえば、50kWの発電設備なら、
50kW × 0.83 × 6時間 = 249kWh
の蓄電池が必要となります。
ちなみに、249kWhの蓄電池となると、以下の図のように業務用のものが必要です。
売電するためとはいえ、かなりの費用負担が伴いますが、現状回答保留となっている設備を止めたままにしておいても無駄ですので、致し方ないと思います。
出力調整に無補償で応じる
これは9時から15時の間は、発電設備の管理者の責任のもとで出力調整を行わないとならず、九州電力は一切の責任を負わないということです。
これはある意味致し方ないかもしれませんが、発電設備側からすれば損な条件ですね。
出力調整の実績データを記録し提出する
これはおそらく九州電力からの出力調整に従わない設備に対して、その証拠を提出させるための条件だと思われます。
もともと再生可能エネルギーの受け入れがギリギリなので、出力調整に従わない発電設備があると、最悪の場合は九州電力エリア内で停電が起こる可能性もあります。
ちゃんとルールを守らせる意味合いでも、データの記録管理は必須条件のようです。
個別協議はやるべき?
それでは、現在回答保留となっている設備を持っている人は、この個別協議に応じるべきなのでしょうか?
今回の個別協議は、九州電力の回答保留が解除されるまでの期間行われるようですので、逆にいえば「回答保留が解除されれば、従来通り何の条件もなく買い取ってもらえる可能性もある」とも読み取れます。
ただし、現状の九州電力の余力を考慮すると、回答保留が解除されても買い取ってもらえる可能性は低いと思われます。回答保留解除というより、買い取り中止に切り替わる可能性のほうが高そうです。
それならば、費用負担が増えたとしても、今回の個別協議に応じたほうが利口かもしれません。今ならまだ本年度の買い取り価格で売電できる時期でしょうし、来年度以降は買い取り価格の大幅引き下げを経済産業省が検討しています。
そのため、今回の個別協議に応じなければ、たとえ回答保留が解除された後、何の条件も無く買い取り可能になっても、買い取り価格が大きく下がっていれば、元が取れなくなります。
現状の発電量から、どれくらいの蓄電池が必要かを求めて、その費用対効果を計算した上で九州電力との個別協議に応じるかどうか検討することをオススメします。