これから家を建てようと考えている方は、さまざまな住宅展示場に足を運んでいるでしょう。ハウスメーカーの担当者に、どんな間取りができるか、価格はいくらくらいか、などを聞いていると思います。
私も家を建てる前に住宅展示場に訪れたことがありますが、そこの営業マンが決まって、こう言うのです。
営業「今、賃貸ですよね?家賃いくら払ってます?」
私「え、7万円ですけど、、、」
営業「それだけ払ってたら家買えますよ!ウチだと金利の安い銀行紹介できますんで、頭金なしでも今払っている家賃と同じくらいで買えますよー!」
とかなんとか。たぶん同じようなセリフを聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?
ちなみに、我が家は会社から家賃補助が半額出てましたので、当時の家賃は3万5千円。それを伝えるとさすがに営業マンさんのトーンは下がりましたが、都心や間取りの広い賃貸アパートに住んでいると、月10万円近い家賃を払っている方も多いと思います。
確かに、それだけのお金を家賃で払っていると、住宅ローンの返済額と同じくらいになりますので、パッと見やっていけそうな気がしてしまいますよね。だって、今現在の家賃支払いでやっていけているのだから、同じ額なら家を建てても大丈夫そうですから。
しかし、そこには大きな落とし穴が待っています!知らずに家を購入してしまうとそのまま奈落の底までーなんてことにも。
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家賃払うくらいなら家を建てた方が得?
そもそも本当に、家賃を払うよりも、同じ額なら住宅ローンを払う方がお得なのでしょうか?
確かに、毎月の住宅ローン返済額と、現在の家賃が同じなら、今までどおりの生活水準でもやっていけそうに思いますよね。しかも持ち家は財産ですから、借りっぱなしの賃貸アパートよりも資産価値はあります。
でも、何か忘れてません?
持ち家には固定資産税がかかる
持ち家は財産ですから、固定資産税がかかります。具体的にどれくらいかかるかは、土地の価値や建物の価値によって変わります。
参考までに、我が家が今年払った固定資産税を紹介しますと、約2万円を年4回払いです。年間にすると8万円もの出費ですね!
さらにこれは、長期優良住宅の特典で当初5年間は固定資産税が半額になった後の税金なので、5年後は単純計算、年間16万円もの出費になります。
賃貸だと、固定資産税は払わないですよね(二年に一度くらい更新費がかかったりしますが)。同じ額なら、と言っても、まず税金で持ち家の方が高くなります。
修繕費もかかる
それでも微々たるものでしょ?だったら頑張って家買った方が、老後も安心だしいいじゃん!とお思いの方は、修繕費を考慮していないかもしれません。
持ち家と賃貸の大きな違いは、所有者が誰かという点です。
もし、今住んでいるところが老朽化したら、誰が直しますか?また、エアコンや給湯器のような設備が故障したら、修理費は誰が負担しますか?
賃貸なら大家さんだったり管理会社が責任持って直します。よほど故意ではない限り、借りている人に費用負担は発生しませんよね。
一方、持ち家は自分で直さないといけません。何が壊れても、何が老朽化しても、全て自腹です。直さなかったら壊れっぱなし。
エアコンが壊れたら10万円、水道管から水漏れしたら何十万、外壁の塗装塗り替えたら100万円単位の出費です。
一戸建てでなく分譲マンションでも、修繕費の積み立てはありますから、賃貸よりお金はかかるのです。
ボーナス払いが入ってませんか?
毎月の住宅ローン返済額が家賃と同じくらいです!などと営業マンが言っていても、その内訳にボーナス払いが含まれていませんか?
ボーナス払いを含めると、毎月の返済額が減ります。そうすると、年間の総支払額は住宅ローン返済の方が多いのに、毎月返済額だけで見比べると家賃と同じくらい、というカラクリが成立します。
もちろん、冷静に考えれば「そんなこと当たり前だよ!」です。しかし、ハウスメーカーの営業マンもプロ。お客様を乗せるための話術に長けています。
例えば、「最近は株価も高く好景気ですから、ボーナスもたくさんもらえますし、もしボーナス払いも含めればこんなに広い間取りで建てれますよ!一生に一度の買い物ですし、間取りは後から変えられませんからねー」などなど。一生に一度、なんて甘美な響きでしょう。
しかし、それにそそのかされてしまうと、現状の家賃よりも高い返済額となっていまいます。
ボーナスも、またリーマンショック並みの不景気が来たら貰えなくなるかもしれません。不確定な収入をアテにするのはリスクが高いと言えます。
将来のライフプランも考えてますか?
家を買うなら、色々と想いがあると思います。子どもが生まれたら賃貸だと隣近所に迷惑かかるから一戸建てがいいとか、広い庭で犬を飼いたいとか。
ただし、そのようなライフプランを思い描いていても、そこにいくら出費が増えるかまで考えている方は少ないのではないでしょうか?
子どもが生まれれば子供服代やオムツ代、病院代など出費が増えます。食費も増えますし、今までどおりの生活水準では家計が赤字になるのは明らかですよね。
それなのに、今の家賃と同じくらいの返済額でいいのでしょうか?
将来の出費の変化まで考えたら、とても今と同じくらいの家賃で返済できる、とは言えませんよね。
もちろん、今勤めている会社で将来昇進が約束されているなら話は別なのですが、なかなか不安定な世の中、年収が年齢に応じて増えていく保証はないです。
今の家賃より安い住宅ローン支払いがベスト
長くなってしまいましたので、ここで今までの話をまとめますね。
- 固定資産税を払わないといけない
- 修繕費が自腹
- ボーナス払いも考慮した年間支払い額で計算しているか
- 将来のライフプランの変化で出費が増えないか
ということになります。これらを踏まえた上でも、今払っている家賃と同じくらいの住宅ローン返済額だから大丈夫と言えるでしょうか?
大丈夫なら問題ありません。でも、大丈夫じゃないなら、もう一回、家を購入するのを検討しなおしたほうが良いです。
具体的には、「どのくらいまでの返済額なら、住宅ローンを借りて家を建てても家計が苦しくない」のか、を検討するということです。
家計のバランスシートを作ろう
先ほど、ライフプランの話をしましたが、将来の出費の変化を予測していくことは非常に有効です。
ファイナンシャルプランナーに相談すると、家計のバランスシートを作ってくれます。バランスシートとは、収入と支出のバランスを示した表で、たとえば以下のようなものです。
グラフで収支が見れるので、赤字なのか黒字なのか一目瞭然ですね。このような表を作って、将来的にどれくらいの収支があるか把握することがとても重要です。
特に、住宅購入は人生の中でも大きな分岐点です。ここで失敗すると、後々の生活が苦しくなってしまいます。
無理してローン組んで、予想以上に出費がかさんで毎月赤字で、子どもの習い事も行かせられないし、家族で旅行する余裕もない、となると、何のためのマイホームが分かりませんよね。
一番良いのは、無理なく返せる範囲でローンを組んで、生活にゆとりを持たせることです。そうすれば、子どもか産まれても、親を介護しなくてはいけなくなっても、車を買いたくなっても、家計が苦しくなることはありません。
その、無理なく返せる範囲のローンを算出するためにも、家計のバランスシートを作ることが重要です。が、バランスシートを作るのはなかなか大変です。
ファイナンシャルプランナーに相談すると、家計のバランスシートを作ってくれます。費用はかかりますが、だいたい2万円程度だと思います。
相談するのに2万円も払えない!と思われる方もいるでしょうが、その2万円で将来の生活にゆとりが出るのであれば、安いものではないでしょうか。
相談料をケチったばかりに、住宅ローン返済で家計が火の車、なんてことになると目も当てられませんよね。
一番簡単な、無理なく返せる範囲のローン返済額
とはいえ、ファイナンシャルプランナーに相談するのは、なかなかハードルが高いかもしれません。
そこで、ファイナンシャルプランナーに相談せずとも、簡単に、無理なく返せる住宅ローン返済額の決め方を紹介します。
それは、今払っている家賃より安く返済できるよう住宅ローンを借りることです。家賃より安い返済額なら、家を買っても家計が苦しくなりにくいです。
と言っても、数千円安いくらいだと焼け石に水です。できれば、家賃より1万円から2万円は少ない返済額にしておくと、後の生活が楽です。
もちろん、返済額が少ないということは、借りれるお金が少ないので、希望の間取りが手に入らなかったり、あるいは狭くなったりするかもしれません。
ただ、背伸びして家を買うと、後で返済できなくなって、最悪の場合は自宅を手放さないといけないかもしれません。
そうならないためにも、これから家を買う人は、今の家賃より安い返済額までしか住宅ローンを借りないようにしましょう。
バランスシートまでいかなくても、お家を買うにあたって自分の家計を見直すことはとても大切なことです。正しい知識をインプットして、ひとつずつ実践することで、住宅資金にまわすための頭金をたくさん貯めることができます。
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頭金があれば住宅ローン借入額が減りますし、毎月の返済額を少なくできますので、今の家賃よりも安くすることができます。良い機会ですので、一度は家計のムダを見直してはいかがでしょうか。
まとめ
以上、今回は賃貸家賃と同じくらいだからと言って家を買うと家計が赤字になることを紹介しました。
戸建てでもマンションでも、持ち家にすると様々な経費がかかります。単純に毎月の返済額だけで考えると、想定外の出費に苦しむことになります。
また、将来の支出の増加も見越して住宅ローンを借りることも大事です。子どもを産むと、一人あたり学費が1000万円かかるそうです。住宅ローンを返済しながら、子どもを育てるだけの余力を残した家計にしないといけません。
このように考えると、やはり今の家賃と同じくらいの返済額だから家を買える、というのは甘い考えだということが分かりますよね。
家を買うのは生涯で大きな買い物のひとつですから、失敗しないように、金銭面については十分に検討することをオススメします。